ボトルネックその1?「CDからデジタルデータを読み出すとき」

ここでの問題はただ一つ、CDにおさめられたデジタルデータが間違いなく拾い出せているかどうかに尽きます。そして、PCオーディオの利点の一つがここにあることを主張してきました。

オーディオ機器としてのCDプレーヤーは、読み取りエラーが出たとしてもそこでストップしてデータを何度も読み直すなどと言うことは許されません。ですから、読み取りエラーが出たときは前後のデータから推測して適当に補完(捏造?)を行うようになっています。そして、ハイエンドの世界では、この「読み取りエラー」を少しでもなくすためにプレーヤーは果てしなく巨大化し、価格も天井知らずになっていきます。
しかし、決して忘れてならないのは、どれほどの高級機になったとしても、「元データ」と「読み取ったデータ」との間で問い合わせをしてその一致を確認するようにはなってないことです。つまりは、それがCDプレーヤーの「仕様」だと言うことです。

これがパソコンのアプリだと間違いなく「バグ」だと指摘されるのでしょうが、今から数十年も前に決まっていた仕組みだと残念ながら「仕様」だと認めざるを得ません。

それに対してPCの場合は、強力なエラー訂正機能で何度でも読み取りをリトライできる利点があります。以前、この違いを一発勝負のライブ録音と、何度でも録りなおしができるセッション録音の違いにたとえました。ですから、この最初のボトルネックをクリアするためには、PCのエラー訂正機能を活用して読み取りエラーが発生するたびに何度も読み取りにいくソフトを使うことが絶対条件だと言うことになります。
その意味で、「Windows Media Player」のように、そもそも最初からこの機能がない(もしもあったらご免なさい。私は見つけられませんでした。)ソフトは、PCオーディオ派としては使う意味がないと言いきれます。

ただし、このエラー訂正機能の仕様はリッピングソフトによってずいぶん異なるようです。

まずは、iTunesのようにデフォルトでエラー訂正機能が「オフ」になっているソフトがあります。
私自身がそれほど熱心なiTunesユーザーではないのであまり使い込んではいないのですが、ネット上などを調べてまわると「iTunesは謎だらけ」という言葉によく出くわします。

それらの情報によると、例えばEACなどではエラー訂正機能が効きすぎて読み取り不能となるCDでも、iTunesでは問題なく読み取れたり、またはEACでは何とか読み取れたとしても盛大にノイズが混じるのに、iTunesでは問題なく綺麗に音楽が聞けるというのです。
ですから、「iTunesの方が優れている」という方も数多くいるのですが、これはPCオーディオ派にとっては「ちょっと待て!」と言いたくなります。
何故なら、PCオーディオ派にとってはエラー訂正機能が働いて読み取れないデータが読み取れては困るのです。また、ノイズはノイズとして認識してくれないと困るのです。
つまり、iTunesのエラー訂正機能というのは本来なら音飛びが起こるようなひどい傷の場合にデータを補完するすることが目的のようで、いわゆるデータの完璧な一致を確認するためのものではないようなのです。

もっとも、このあたりの技術的なことは素人ですから理解の誤りがあるかもしれません。
しかし、EACのようなソフトでリッピングしたときと、iTunesでリッピングしたときでは明らかに音が違います。ですから、iTunesのエラー訂正機能というのはCDプレーヤーのエラー補正に近い働きだと考えた方がいいようです。
そう考えると、この機能が何故にデフォルトで「オフ」になっているのかも納得できますし、入力系の純度を極限まで求める人にとってはあまりふさわしくないソフトだと言わざるを得ません。

ですから、PCオーディオ派御用達のソフトは、EACやPlexTools Professionalのように読み取りエラーが発生するたびに執拗にリトライをするソフトに限ります。
こういうエラー訂正機能を働かせると、ものによってはエラーが多すぎて読み取り不可になるCDも存在します。それでは困るという方も多いでしょうし、そう言う方にとってはエラー訂正機能は「邪魔者」とうつるかもしれません。しかし、PCオーディオ派はそう言うCDは基本的に「傷物」であり、お釈迦になるべき存在と判断するはずです。
なぜなら、PCオーディオ派にとってCDとは購入したらすぐにドライブにセットしてリッピングすべき存在であり、CDそのものはHDがクラッシュしたときのための「バックアップ」としてのみ存在価値があるからです。ですから、読み取りもできないような中古、もしくは傷物のCDは、再生用の音源としての価値を見いださないのが一般的だからです。

ただ、こういうソフトのエラー訂正機能ですが、細かくチェックしていくと色々と違いがあるようです。
私の知るかぎりでは、やはりPlexTools Professionalが最も細かく設定ができるようです。

PlexTools Professionalの設定画面はこのようになっています。
エラー訂正機能の設定は左下の「DAE エラーリカバリーオプション」から行います。

もっと詳しく見ると、以下のように5つのオプションを選ぶことができます。当然のことですが、(1)の「エラー訂正を行わない」を選んではいけません。(2)?(5)では何を選ぶべきかは難しいですが、私は取りあえず(5)を選んでいます。

また、どこまでエラーが出れば「読み取り不可」とするのかと言う「最大エラー数」や「リトライ」の回数なども細かく設定可能です。
細かいオプションは以下の通りです。

もちろん、これ以外にも優れもののソフトはあると思いますが、ポイントはできるかぎり強力なエラー訂正機能を働かせて、CDにおさめられているデータを極限まで正確に拾いだすことが大切だと言うことです。

さて次回は、「ボトルネックその2?音楽ファイルをハードディスクから読み出すとき」になるのですが、実は、今回この問題をあれこれ探っている内にこの分野が大きく前進していることを知らされました。
このボトルネックは煎じ詰めれば、ミュージックプレーヤーに何を使うのか?と言う課題に収斂されます。そして、ほんの少し前に「フリーのソフトでは、wavファイルに関しては『Frieve Audio』を超えるものを私は知りません。」などと書いたのですが、知らない間に世間は大きく前進していることに気づかされました。

特に、個人的に注目しているのは「cMP2 = cMP + cPlay」です。
他に、フリーではありませんが「XXHighEnd」と言うソフトもあるようで、デモ版でもかなりの機能が確認できるようです。

特徴は、両者ともに、音楽ファイルを全てメモリに読み込んでから再生する「メモリプレーヤー」だと言うことです。
これで、いとも簡単に「音楽ファイルをハードディスクから読み出すとき」のボトルネックを乗り越えてしまっています。

実は、このボトルネックを克服するためには「大量のメモリを積んでそれをRamDisk化して、そこへファイルを読み込んで再生すればいい」、と書くつもりだったのですが、このソフトを使えばそんな複雑なことをしなくてもいいのです。
ただし、システム要件としてメモリに関してはかなり贅沢を言いますし(最低で2Gb)、さらに出力はわりきってASIOドライバーしか対応しないという潔さですから、すぐに導入できる人は限られるかもしれません。
また、「cMP2 = cMP + cPlay」はジッターの低減にも意を注いでいますので、メモリに読み込む技との「合わせ一本」で、今までの再生ソフトとは隔絶した音質を誇っています。

使い勝手などを含めると未だにβ版の手前というレベルなので、国内ではあまり紹介もされていないようですので、次回はこのソフトについて詳しく報告したいと思います。
ホントに凄い音がします。


1 comment for “ボトルネックその1?「CDからデジタルデータを読み出すとき」

  1. NGT
    2010年1月10日 at 3:48 PM

    はじめまして、
    偶然ここにきたのですが、
    このページを見ていていくつか気になったことがあるので投稿させていただきます。
    古いエントリにすみません(・・;
    まず、

    >「Windows Media Player」のように、そもそも最初からこの機能がない(もしもあったらご免なさい。私は見つけられませんでした。)

    とのことですが、WMPにもエラー訂正機能はついています、
    WMP10や9の事はあまりおぼえていないので、わかりませんが
    WMP11の取り込みタブの左側にあるドライブを選択する欄(ディスクがありません、やドライブ名、ディスクタイトル等が表示されている所)を右クリックし、プロパティへ進むと
    「アナログ」と「デジタル」というチェックボックスがあります。

    ここでアナログを選択すると、光学ドライブに接続されている4ピンのオーディオアナログケーブルを使い市販のCDプレイヤー的動作をし、

    デジタルを選択した上で、その右にある「エラー訂正を使う」というチェックを入れるとS-ATA、もしくはIDEからのデジタル信号として出力されます。

    あともうひとつ気になったのですが、
    PCオーディオをはじめよう
    の記事について(このエントリとは関係ないところですがすみません・・・)

    オーディオについては全くの素人で、どちらかというとPC自体をこねこねといじくりまわす者の意見ですが、
    D/Aコンバータを使用する場合、外部のオーディオインターフェイスを使用することにどのような意味があるのでしょうか
    最近のオンボードチップはネットブック等によく使われるALC268等でも24bit192kHzまでの出力に対応しています
    デジタルデータを取り扱っているので、変わらないような気がするのですが・・・

    長文失礼しました

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