8月の末からダウンロードが可能となり、あまり芳しくない評判が多数を占める(^^:ソフトですが、私のようなものにとっては「Windowsにおける再生ソフト」としては結構使えるのではないかと感じています。
しかしながら、使い勝手や音質の確認以前に、その前提については少しふれておく必要があるようです。
まず、このソフトは音質だけを重視したシンプルな「再生ソフト」ではなくて、「再生も出来る音楽管理システム」というのが基本的な立ち位置でしょう。
ですから、「Media Go」の後継ソフトとして「再生も出来る音楽管理システム」ととらえる人にとっては何とも使い勝手の悪いソフトと映るようです。
しかし、単純に「再生ソフト」と見る人にとっては「結構つかえるんじゃないかな」と映るのです。
その背景には、「PCオーディオ」を巡る二つの流れがあります。
一つはPCオーディオの利便性に重きをおく流れであり、もう一つは利便性は犠牲にしても高音質を目指す流れです。
もちろん、現実はこの両極端に二分化するのではなくて、その2点間の適切な位置に己の立ち位置を定めるのですが、それでもどちらかに軸足がのっている事は間違いありません。
そして、このソフトを「再生も出来る音楽管理システム」とたらえる人は、PCオーディオが持っている「利便性」に重きをおいている人たちでしょう。
ネットやCDからから簡単に音楽を取り込むことができて、さらには取り込んだ音楽をアルバムやジャンル、アーティスト単位で自動的にタグ付けをしてくれます。
人間というのは、自力で管理できるデータの上限は500程度だと言われていますから、数千を超えるような音楽を自動的に管理してくるシステムは非常に便利です。
さらには、膨大なライブラリから簡単に目的の楽曲を探し出してプレイリストとしてまとめてくれます。
こういう人たちにとっては、既に別のソフトによって手間暇をかけて構築したデータが存在するでしょうから、そのデータをスムーズに移行できないというのは致命的です。
さらには、音楽を外に持ちしたいときにもSony製品にしか転送できないというのも我慢ならないことでしょう。
しかし、これを単純な「再生ソフト」と見る人にとっては、使い勝手よりは「音質」の方が重要であることは間違いありません。
CDから音楽を取り込むときも別途専用のリッピングソフトを使うでしょうし、取り込んだ音源もソフト任せで管理するのではなくて、自分なりに工夫をしてディレクトリ構成で管理していることが一般的です。
ですから、そのディレクトリ構成を読み込んでくれればそれで充分であって、何か引き継がなければいけないデータなどはないというのが一般的です。
そして何よりも、メインとなる音楽再生をWindows環境で行うことなどは考えていない人が多いはずです。
それでも、ちょっと聞きとして「Windows環境での再生システム」が必要なことも事実なので、そう言うときの再生ソフトとしては「結構使える」のではないかと感じるのです。
ですから、ここでの評価と紹介はそう言う前提に立ったものであることはあらかじめ了承しておいてください。
まずは音質面のチェック
「Sony Music Center」に注目したのは、意外と音がいいと思ったからです。
そして、「ちょい聞き」のシステムとしては、基本が「音楽管理システム」なので使い勝手がいいので、そのバランスを評価したいと思ったのです。
「Windows環境での再生システム」としては「foobar」を長きにわたって使ってきました。
Win8でWasapiモードを聞き比べてみました。~やはりfoobarは偉い
確かに「foobar」は使い勝手のよいソフトで、音質面でもまずまず納得の出来る範囲には収まっていて「偉い」とは思います。
しかし、「Sony Music Center」の音質は意外なほどには優れているような気がするのです。
少し煩雑になりますが、音質評価をした再生環境(サブシステム)を紹介しておきます。
サブシステムは、かつてはメインシステムで使っていたものが引退をして「余生」をすごしている機器たちですから寄せ集めもいいところです。
ただし、WindowsとLinuxの2系統は用意して音質比較は出来るようになっています。
Linuxは「Tiny Core+MPD」です。ただし、音源のファイルはネットワーク上のNASではなくて、内蔵HDをマウントして収納しています。
音源ファイルの収納場所としては「NAS<内蔵HD<メモリ」と言う順番で音質面では優れていると思います。
もっとも、ネットワーク上におけるノイズ対策を徹底的にやれば「NAS」に音源ファイルをおいても音質面でのデメリットは小さくなりますが、コストとノウハウが必要ですので、ちょっと聞きとしては使い勝手とのバランスも考えて内蔵HDにファイルをおいています。
次ぎに「DDC」に関しては、Windowsは「Fireface400」というそれなりの(かつての)高級機を使っていますが、Linuxに関しては「RedKye」という安物をあてがっています。
この部分では、Linux環境はかなりのデメリットを背負っているのですが、それでもどんな再生ソフトを使ったWindows環境よりも優れた音を聞かせてくれていました。
そう言う環境を前提としてあれこれ聞き比べてみたのですが、一番分かりやすい例を一つだけあげておきます。
聞き比べたのは、Enyaの「Watermark」から第5曲目の「Exile」です。
Enyaに興味のない人はピンとこないかもしれませんが、おそらくどこかで一度は聞いたことがあると思います。
Enyaにとっては実質的なファーストアルバムになるこの作品の中で、この「Exile(放浪者)」は最も悲劇性の高い音楽になっています。そのために、かなり強烈な低音が通奏低音のようにリズムを刻んでいます。
おそらくアナログ楽器ではなくてデジタル的に作られた響きだとは思うのですが、雰囲気的にパイプオルガンのペダルのような響きです。
これは下の方までしっかり再現できるシステムでないと確認できないのですが、この低音部がどこまで再生できるかによって音楽全体の雰囲気が随分と変わってきます。
それは多重録音されたEnyaの歌声もそうですし、中間部の木管楽器のような響きもそうです。
これが、どこかシャンシャンという残響成分が多めのふんわりした感じで聞こえるときは、この下支えの低音部がほとんど再生できていないのではないかと思われます。そうなると、小綺麗ではあっても、この音楽にこめられた悲劇性は希薄になります。
残念ながらWindows環境の「foober」はそう言う鳴り方をしています。
それに対して、「Sony Music Center」の方はEmyaの声にも木管楽器風の響きも、「foober」と較べるとかなりボディ感があります。
当然の事ながら、スピーカーは「LS3/5A」という小さなスピーカーなので、その強烈な低音部は無理ですが、出来る限り下まで再生することで中間の美味しい部分の響きが変わってきます。その辺のバランスと言うことでは「foober」よりも「Sony Music Center」の方が優れています。
しかしながら、ちゃっちい「DDC(Red Key)」をあてがわれているにもかかわらず、Linuxの「Tiny Core+MPD」はその上をいきます。
Enyaの声も木管楽器風の響きもWindows環境で再生されたどの音よりもボディ感があり、しっとりとした艶のような雰囲気も演出します。
取りあえずの雰囲気としては「foober<Sony Music Center<Tiny Core+MPD」という感じです。
もう少し詳しいことは次回に譲りますが、最初に述べたような前提で使うのであれば、制限なしのフリーで使えますから、一度は試してみる価値があるのではないでしょうか。