DDCへのクロック注入の効果

メインシステムの調子があまりよろしくない

8月の終わり頃からメインシステムの調子があまりよろしくないのです。
調子がよろしくないと行っても、あまり暑さゆえにハード的に問題が起こったわけではなく、出てくる音の様子がよろしくないのです。

では、どのようによろしくないのかといえば、何となく毛羽立ったような雰囲気が払拭できないのです。その前はもう少し滑らかで、かといって表面的な綺麗さだけで中味もみっしり詰まったような風情があったはずなのに、今は何となく中味がすかすかで、おまけに表面も毛羽だったような雰囲気が払拭できないのです。

もちろん、こんな風に書いたからと言って、おそらく事情が分かっていない人が来て現状の音を聞けば、ほとんど違いには気づかないレベルかもしれません。しかし、このシステムで毎日毎日音楽を聴き続けている当事者としては、無視できない違いなのです。
と言うか、オーディオ的にはそんな立派な話ではなくて、実情は音楽を聞いていて今ひとつ楽しめない日が続いたのがきっかけでした。
なんだか、最近イマイチ冴えんなぁ!・・・と言う、あのよくある雰囲気です。

そこで、お気に入りの何枚か、例えばセル&シュヴァルツコップの「最後の4つの歌」とか、セル&クリーブランド管によるモーツァルトの「ト短調シンフォニー」なんかを聴き直してみるんですが、なんだか今までの聞きなれた雰囲気とは違うような、違わないような雰囲気なのです。そこで、ここからがオーディオマニアの悲しき性だとは思うのですが、あれこれの音源を取っかえ引っかえして「分析的」に聞き出してみたわけで、その結果が「毛羽立っている」だったのです。

ところが、どう考えても原因が特定できず、いろいろと対策を施せば施すほど事態は悪化していくのです。
結線のミス、接続端子やケーブルの劣化などお決まりのポイントをチェックしても効果はなく、ソフト的にlightmpeの設定をあれこれ弄ってみても状況は悪化するばかり、最後は禁断のイコライザの設定をもうち度やり直してみても、こちらもよけいに状況は悪化していくばかりなのです。

全くもって「困った!!」という状況なので、とにかくは、いろいろやった設定変更は全てチャラにして、もう一度一から考え直そうと思って機器に近づいたときに、予想もしていなかった「大馬鹿」にやっと気づいたのです。

「hiface Evo」のクロック入力を示すランプが消えています!!!

「エェーッ!!」という感じだったのですが、何故に気づかなかったかといえば、「Evo Clock」からの同軸ケーブルはちゃんと接続されていたからです。しかし、よーく見てみると、クロックが入力されているときには点灯するはずの緑色のインジケーターが消えています。
「ギョエー!!」という感じで今度はラックの奥に突っ込んである「Evo Clock」をチェックしてみると、電源は「ON」になっているのに、これまた緑色のインジケーターが消えています。
「これは、逝っちゃったのか!」と愕然としたのですが、さらに詳しく見てみると・・・「Evo Clock」に電源を供給している「Evo Supply」がダウンしています。
そして、恥を忍んで言えば、何のことはない、何かのはずみで「Evo Supply」の電源ケーブルがすっぽり抜けていたのです。

これを図で表すとこうなります。

clock_1

結局は、「Evo Supply」の電源ケーブルが抜けていたのでバッテリを使い切った時点で「Evo Clock」はダウンし、「hiface Evo」に外部からクロックが入力されない状態になっていたのです。

Evo-crop

hiFace Evo & Evo Clock

お粗末と言えばお粗末な話なのですが、困るのは、たとえ外部からのクロック入力がダウンしても音楽は問題なく再生できると言うことです。そして、そのダウンした状態での再生音と荘でないときの再生音の間には微妙な差しかないと言うことです。開き直るわけではないのですが、ある日どこかで「Evo Supply」のバッテリが切れて「hiface Evo」に外部クロックが注入されない状態になったのですが、その境目を聞いていて指摘できる人はほとんどいないのではないでしょうか。

早速に、「Evo Supply」に電源ケーブルを挿入すると恙なく「Evo Clock」の電源インジケーターも点灯し、さらに「hiface Evo」に外部からクロックが入力されていることを示すインジケーターも点灯しました。
clock_2
そして、この状態で音楽を再生すれば、これまた恙なく「昔ながら」の調子でなり始めてくれました。
まさに、お馬鹿の極みでした。
しかし、お粗末きわまる話ではあるのですが、この事を通してあらためて二つのことを学ばせてもらいました。

二つの学んだこと

一つは、そう言うきわめて微妙な差異であっても、それが音楽再生にとって本質的な部分での差異であるならば、音楽を聴き続けていく中で人間の耳は確実にその違いを聞き分けると言うことです。

これはいつも言っていることなのですが、何をやっても音が変わるのがオーディオというものです。
ですから、大切なことは、何らかの対策によって音が変わることではなくて、その対策によって変わったことが「改善」なのかどうかを聞き分けることです。
そして、対策を施して何かを変えたのならばその状態で取りあえずは1週間くらいは聞き続けることが重要だと言うことです。そして、そうやって聞き続けてみて、以前よりも音楽が心に入ってくるならばその変化は「改善」と判断してもいいでしょう・・・と言うことです。その場で聞いた限りの感覚で判断すると大きな間違いを引き起こすと言うことはよく分かっていることなのですが、時間をかけて心が音楽に対して素直であるならば、必ず「改悪」は嗅ぎ取るという「安心感」は持つことが出来ました。

そして、二つめは、図らずも、「DDC」外部クロックを注入しない状態の音を約一ヶ月にわたってじっくり聞き比べてみると「貴重な経験(^^;」をさせてもらったおかげで、100%の自信を持って、たとえ後段の「DAC」にきちんと外部クロックを入力していても、その前段の「DDC」にも外部クロックを入力することは有効であると言い切ることが出来るようになったことです。

これは理屈から言えばかなり不思議な話なのです。
この辺のことは以前に「クロックとジッターについて考える(3)」の中で、どこにクロックジェネレーターを繋げばいいのかという話ページでじっくりと考えてみたことがあります。

掻い摘んで言えば、クロックを注入するのはD-A変換する直前が最も有効だと言うことです、・・・と言うか、「SPDIFクロックや動作基準クロックなどのオーディオマスタークロック以外のクロックソースは、D-Aコンバータの変換精度に直接関係しない。」はずなのです。ですから、現状ではDACの「D-07X」に一番精度の高いジェネレーターを奢っています。そして、「Evo Clock」が余ってくるので、念のために「hiface Evo」の方に注入することで以下のような構成になっているわけです。

Clock_5

理論的には、この「hiface Evo」にクロックを注入することにはあまり大きな意味はないという見方が一般的なのです。しかし、意味がないと言われながらも「やれる事はやってみないと気が済まない」のが実践派オーディオマニアの性なので、「DDC」と「DAC」の両方にクロックを注入してみるというチャレンジをされていて、その方の報告によると間違いなく音が良くなると言う報告もあります。
そんな事もあって、取りあえずは上のような構成にしていたわけですが、気持ち的には「お呪い」程度にしか期待していなかったのですが、今回の件で間違いなく効果があることが自分の中でははっきりと実証されたわけです。
まあ、転んでもただでは起きてこないのがオーディオマニアというものですって・・・、何という開き直り(^^v


4 comments for “DDCへのクロック注入の効果

  1. よんまる
    2015年11月3日 at 1:52 PM

    オーディオあるあるですね。

    音が良くなることはよいことなのですが、下流でどれだけ対策してもその上流でもなお音が変わるということは際限ない対策を招きかねずとても厄介です。

  2. ホシ
    2015年11月8日 at 2:45 PM

    「DDC」と「DAC」にCG-1000からクロックを注入するより個別のクロックを注入した方が良いと言う事でしょうか?
    今まではすべてのデジタル機器に同一のクロックジェネレーターからクロックを注入した方が良いと思い込んでいたので( 全てにおいて有用ではないにしても)大変興味深い情報ですね!

    • 2015年11月8日 at 2:59 PM

      「DDC」と「DAC」にCG-1000からクロックを注入するより個別のクロックを注入した方が良いと言う事でしょうか?

      と言うよりは、個人的にはDA変換の直前にクロックを入れているのだから、それよりも上流で注入しても「意味がないだろ!」と思っていたのです。理論的に考えれば絶対にそうなるはずです。
      ただ、そう思いながらも、せっかくhiFace Clockがアマってんだから取りあえずDDCにも接続しておこう・・・くらいのレベルで繋いでただけなのです。

      ただ、そのレベルで繋いでいたにもかかわらず、詰まらぬミズで(電源が外れていたーー;)DDCへのクロック注入が途切れてしまい、その結果として「なんか冴えんな」と思うほどの変化があったことに驚いているのです。

      ただし、このあたりはやってみないと分からない・・と言うのが未だに真実なような気がします。何故ならば、このあたりの音の変化がなによって引き起こされるのかが理論的にはどうしても説明がつかないというのが現状だからです。
      一部には全てをジッターに起因させる向きもあるのですが、おそらく根はもっと深いのではないかと睨んでいます。そして、理論的に割り切れないという現状では「試行錯誤」とその「結果」の蓄積こそが重要だというわけです。

  3. 異教徒
    2015年12月1日 at 12:17 PM

    yung様
    ご存知かもしれませんがhiFaceEvo TwoやEvoClock Two,EvoSupply Twoといった新製品が12月下旬から来年の3月頃までに発売されるようです。
    詳細は12月10日頃発表するとの事です。

Comments are closed.