LANケーブルと音質との関係については「PCオーディオの都市伝説(2)~「LANケーブルで音が変わる」で取り上げて考えてみたことがあります。
あの頃は、「デジタル不変」の神話が非常に根強くて、今では常識の範疇とも言える電源やUSBケーブルの改善でさえも「オカルト」と批判されていました。
「私のような完璧なシステムを構築していれば電源やケーブルを変えることで音質が変化することなどはあり得ない。そんなもので音質が変化するのはシステムの不完全さを露呈しているだけだ!」と力説されている方いた時代でした。
そこで、当時「オカルト」と批判されていたあれこれを俎上に上げて「PCオーディオの都市伝説」として検証してみました。
- パソコンやDDC、DACなどの電源を変えれば音質は変わります。
- USBケーブルを変えれば音質は変わります。
- リッピングの仕方によって音質は変わります。
- LANケーブルを変えれば音質は変わります。
- 可逆であっても圧縮したファイルと非圧縮のファイルとでは音質は変わります。
随分たくさんの方からもコメントを頂き、追加検証の報告などもいただいて、概ね(1)~(3)に関してはコンセンサスが出来上がっていると思います。
しかし、(4)(5)に関しては未だに疑義は残っています。
実は、私自身の中にも疑義があって、LANケーブルの見直しに関しては長い間放置していました。
なお、話が本筋から少し離れるのですが、(5の「可逆圧縮のファイルと非圧縮のファイルの音質の違い」に関してはLANケーブル以上に疑義を感じています。しかし、疑義を感じながらも現実にはリッピングした音源は全て非圧縮のWAVEファイルで保存しています。
理由は簡単で、わざわざ一手間かけて圧縮しなくてもHDの大容量化と低価格化の恩恵を受けて、非圧縮のままで保存してもほとんど不都合がなくなったからです。それならば音質的に「非圧縮>圧縮」という疑義が出されているのに、何もわざわざ一手間かけて圧縮ファイルにする理由が見つからないからです。
また、LINNが推奨する「dBpoweramp」というソフトを使えばWAVEファイルにタグ情報を埋め込む事も可能です。
可逆圧縮ファイルの意味は、ネット上で音源を配布する手段意外には見いだせないというのが私なりの結論です。
ただし、この問題についてはもう一つ突っ込みどころがあります。
それは、最近幾つかのメーカーからリリースされはじめて「オーディオグレード」なるNASの存在です。
例えば、バッファローから「ハイエンド・ネットワークオーディオプレーヤーの実力を100% 発揮できる形で伝送すること」を詠ったNASが2機種発売されています。このうちHDにSSDを使用した「N1Z」は容量が1TBです。
これで80万円!!
もしも、こういう超高価なNASに意味を感じるならば1TBの容量は貴重です。
それだけに、「USB-HDDを接続しての容量アップも可能です」というメーカー側の説明には思わず目が点になりました。
<引用開始>
■外付けストレージのUSB接続で容量追加も可能
ーー 「N1Z」はSSD容量が1TBですが、ハイレゾ音源をメインに運用する場合、ちょっと足りないという方も少なくないのではないでしょうか。
荒木氏 USB-HDDを接続しての容量アップも可能です。「N1Z」は4つ、「N1A」は3つのUSB端子を搭載しています。うち1系統がUSB-HDDを接続することが可能で、こちらに保存した音源はDSDも含め、本体に保存した音源と同等に配信できます。
<引用終わり>
1TBの容量が足りなくなっても「USB-HDDを接続して容量アップ」すればいいと思えるような人ならば、最初からこんなNASを使わなければいいのに!!と思ってしまいます。まあ、他人様の懐ですから、さらに他人があれこれ言う筋合いではありませんね。
ただし、そう言う環境に「意味」を感じる人ならば可逆圧縮を選ぶか、非圧縮を選ぶかは微妙な問題とはなります。
と言うことで、話を本筋のLANケーブルに戻します。
前回の簡単なおさらい
まず最初に確認しておくべき事は「LANケーブルを通してデータをやりとりするときに、そのデータが化けたり、欠落したりすることは基本的にはあり得ない」ということです。ですから、「ネットワークを構成するLANケーブルで音が変わるなどと言うことはあり得ないし、あってはならない」ことだという思いがありました。
「理論的」に考えれば、LANケーブルを介したデータのやりとりであれば、NASに置いてある音楽ファイルと音楽サーバーである「lightmpd」や「Voyage MPD」に届いた音楽ファイルは全く同じものです。
しかし、実際にLANケーブルを変えれば音は変わります。そして、その「変わる」という事実は多くの人によって検証確認が為されています。
ただし、その「変わる」方向性が改善なのかどうかは微妙ですし、何よりもその「変わる」仕組みがよく分からないので、音質改善を詠ったLANケーブルの技術的背景はかなり「オカルト」なのです。そして、そう言う「オカルト」的な背景であるのに(あるが故・・・か^^;)1メートル当たり何万円という価格がついているのが困るのです。
オーディオの世界では「高額=高性能・高音質」という刷り込みがありますから、変な癖をつけて高額設定をした方が火事場泥棒みたいに一儲けできてしまうのです。こういう困った体質が今のオーディオの世界を蝕んでいるので、そう言う体質を助長するような買い物はしたくないという思いもあって、LANケーブルの見直しに関しては長い間放置していました。
まずは長さを短く!!
そこで、まずは汎用品のLANケーブルで長さを短くしてみました。
何故かと言えば、前回の検討の中で「有線方式のLANはノイズループを作るという話を見たような記憶もあります。さらに、長く伸びたLANケーブルは、それ自身がアンテナのようになって外部のノイズを拾ってくることも否定できないかもしれません。」というのが一つの方向性だったからです。
ならば、出来る限りLANケーブルを短くすればいいのではないかという発想です。使うのは汎用品のカテゴリ7のLANケーブルですからお金もほとんど必要ありません。
量販店で「ツメの折れないLANケーブル(Cat7対応)」というのが安売り(定価2480円が3分の1程度になっていました)していたので、長さ50センチメートルのケーブルを2本買ってきました。
これは前々から一度やってみようと思っていたのですが、やろうとすれば「お金」よりも「体力」が必要になり「手間」もかかるので先送りになっていました。
現状はこういうかなりお馬鹿な状態になっていました。
使っていたのは汎用品のいLANケーブル(Cat7対応)で、NASとハブの間が3メートル、ハブと「lightmpd(APU.1D4)」の間が5メートルでした。
対策をしているとすれば、ハブとNASは「クラスB」のEMI規格を取得している機器を使用していることと、ハブと「lightmpd(APU.1D4)」の間にノイズフィルタの「RLI-1」を二つ挟み込んでいることくらいです。
そこで、機器のセッティングを根本的に見直して、LANケーブルの長さをそれぞれ50センチメートルまで短縮しました。最短のケーブルは30センチメートルだったのですが、ハブやNASが「lightmpd(APU.1D4)」に近づきすぎるのはデメリットもあるだろうと言うことで50センチメートルをチョイスしました。
なお、これも少し横道にそれますが、電源と「lightmpd(APU.1D4)」をお隣どうしに置くよりはある程度離した方が音質的にはメリットがあるようです。ハブやNASに関しても同じような事が言えるだろう、と判断して50センチメートルを選びました。
結果ですが、きわめて微妙です。
そして、一般論として言えば、こういう風に一点に絞って手を加え、さらにはその変化を精神を集中させて聞いてみて「微妙」というのは「変化無し」と判断しろと言うことです。ただし、悪化した感じもないので、ハブやNASと「lightmpd(APU.1D4)」の距離がこの程度ならば悪さはしないようです。
そうなると、「有線方式のLANはノイズループを作るという話を見たような記憶もあります。さらに、長く伸びたLANケーブルは、それ自身がアンテナのようになって外部のノイズを拾ってくることも否定できないかもしれません。」というのは、否定されるのかもしれません。もしくは、5メートルが50㎝になったくらいでは、ノイズを拾うという点では大差がないと言うことになります。
さて、次はどうするかです。
気は進まないが「オーディオグレード」なるLANケーブルを使う
さて、次はどうするかですが、こうなると次の一手は「オーディオグレード」なるLANケーブルを使ってみるしかありません。ただし、簡単なおさらいのところでもふれたように、確たる理論的な裏付けのない「オーディオグレードのLANケーブル」にそれなりの投資をするのは気が進みません。そこで、取りあえずは、出来る限りの少額投資で試してみることの出来るケーブルはないかと物色して、2種類を選択しました。
一つめはSAECの「オーディオ用の高品質なLANケーブル」と銘打った「SLA-500」です。
売り文句は「インピーダンスの整合、広い周波数帯域、ケーブル端部における低クロストーク、低減衰、高いシールド効果、低リターンレス、そして導体毎の伝送速度の均一化」です。
ただし、ネット上での評判は上々で、実売価格も最短30㎝のケーブルで約9000円程度、最長の4メートルでも17000円程度です。魑魅魍魎のこの世界ではまだしも「良心的」な値付けです。
もう一つが、BELDEN LANケーブル 1874A MediaTwistです。
このLANケーブルはBELDEN製と言うことで気になっていましたし、50㎝で2000円程度なので一度は試してみたいと思っていました。しかし、既に多くの方がご存じのように某ショップがこのケーブルを熱烈に支持していて、さらにはその支持の仕方が神がかっているので、どうにも使う気になれずにいました。
しかし、一部のショップの取り上げ方に不快感を感じて試してみないとするならば、お店の宣伝に影響を受けているという点において、宣伝に踊らされて買い込んでいる人と本質的には変わりません。
要は別の店から購入すればすむ話です。
と言うことで、まずはお安い方の「BELDEN製のLANケーブル」を使ってみることにしました。
はっきりと音は変わります。びっくり!!
基本的な構成は全く同じです。今まで使っていた汎用性のLANケーブルを「BELDEN製のLANケーブル」に変更しただけです。
結果は予想を超えていました。
ただし、音が良くなったという「価値判断」は取りあえず保留しておきます。
しかし、「音が変わった」と言うことは確実に保障できます。
その変化を一言で言えば、低域の出方が変わってしまいました。ですから、明らかに音のバランスが変化しています。
PCオーディオと言えば真っ先にイメージされる、透明度が高くてクリアだが音が硬いと言われる傾向が大幅に変わります。もちろん、LANケーブルをカエル前でも、一昔前のPCオーディオとは一線を画すレベルにまではきていました。しかし、LANケーブルをベルデン製に変えることで、それでもまだPCオーディオ的な傾向が残っていたことに気づかされるような方向での音の変化だったのです。
考えてみれば当然のことですが、アナログでもデジタルでも、突き詰めていけばいくほどに音の傾向は似通ってくると言うことなのでしょう。
こういう言い方をすればあまりにも大雑把ですが、アナログは暖かい音が最初からしますが、突き詰めていけばPCオーディオにも負けないような高解像度な世界も両立していきます。PCオーディオは最初からかなりの高解像度ですが、これも突き詰めていけば次第にアナログ的な暖かさを身にまといはじめます。
そう言う意味言えば、LANケーブルを汎用品からBELDEN製のLANケーブルに変えることで、また一歩、アナログ的な暖かさに近づいたような気がします。
ただし、困るのは、この変化が何によってもたらされているのかが全く理解できないのです。
やはり、依然として、頭の中には「LANケーブルで音が変わるなどと言うことはあり得ない」という思いが消えないのです。しかし、現実は、明らかに「音が変わる」のです。
もっとも、こんな事を改めて書けば、また「私のような完璧なシステムを構築していれば電源やケーブルを変えることで音質が変化することなどはあり得ない。そんなもので音質が変化するのはシステムの不完全さを露呈しているだけだ!」とお叱りのメールをいただくかもしれません。
とは言え、この結果を得て、無理のない範囲であれこれのケーブルは試してみようかという気にはなってきました。取りあえず、次は「SLA-500」あたりになるのでしょうか。
ご無沙汰しておりました。
この問題も、ケーブルの信号伝播能力が CPU の処理能力、又は基盤に影響をあたえているのでしょうか?だとすれば、より非力な基盤でどのように音質が変化するのかを調べてみるのも良いかもしれませんね。
初めて投稿させていただきます。jimijimと申します。
いつも興味深く読ませていただいております。また、MPDの構築では大変参考にさせていただきました。ありがとうございました。
さて、どのサイトでもほぼROMに徹している私が突然コメントすることを思い立ったのは、長年疑問に思っていたことをyung様がどうお考えになるか知りたかったからです。
ケーブルによって音が変わるかどうかについては、私はニュートラルな立場です。スピーカーケーブルならいざしらず、データ伝送ケーブルで変わるはずがないだろうという気もするのですが、所詮は電圧をかけて電流を流すという仕組みは変わらないわけで、まあ変わることもありえるのかなという感じです。
私自身はデータケーブルに20kや30Kのお金を投資する財力はないので、この手の論争をただROMしているだけで意見は持ちえません。
そこで、本題です。
アンプ単体の特性を測定する場合、メーカーはスピーカー出力段の計測を行うはずです。(計測データが公開されているのでやっているはずです。)
スピーカーからの音を測定するわけではないので室内環境とは無関係です。
アンプの領域をもっと拡大してNAS-プレーヤー-DAC-アンプをひとつのサブシステムとして考えれば、同様の測定ができるはずです。
この状態でUSB、LANケーブルだけを変えて測定値が変われば、音の良し悪しはともかく「ケーブルで音が変わる!」は客観的事実となって、論争は終結するように感じます。
なぜ、こういったデータが出てこないのでしょうか?メーカーの測定機器であればそんなに
難しいことではないように思います。(それとも難しいのか?)
ケーブルで音が変わるのはオカルトだ、と言う気は毛頭ないのですが、オーディオ業界のこういった体質には長年、不信感しか感じないのは私だけでしょうか?
以上、長文失礼いたしました。
こちらの記事でもクラシックの記事でも、オーディオマニアにありがちな原理主義的妄想とは無縁に感じるyung様のご意見をお伺いいたしたく、一気呵成に書いてしまいました。お許しください。
率直に申し上げて、何を測定したいのかがイマイチよく分かりません。
周波数特性なのでしょうか?歪み率なのでしょうか?それとも、それらとは異なる「何か」なのでしょうか?
何を測定したいのかによって可不可は変わってくるでしょうし、難しさも変わってくると思います。
ただ、一般論として言えば、前半のデジタル段と後半のアナログ段の両方において共通して比較検討できるような測定項目って何だろう?とは思います。
例えば、音源の周波数特性を比較するならば、前半のデジタル段で変化することはありません。しかし、後半のアナログ段に入れば絶対に変化します。おそらく、同じケーブルを使っていても、測定時期を変えれば経年劣化(世間ではエージングとも言ったりします^^;)で必ず変化します。
つまりは、デジタル段というのは呆れるほどに変化しないのに対して、アナログ段というのは呆れるほどに変化するのです。
問題は、この変化しないはずのデジタル段であっても、現実にはケーブルを変えたり電源を変えたりすると、何故か出口の「音」が変わってしまうので、みんな困っているのだと思います。
そこで、こういう事態に関しては、何らかのガイドラインを自分の中で決めておかないと訳の分からない「オカルト」に足下を掬われることになると思います。
この問題については、少し前に論議になったことがあって、私なりの考えを以下の一文にまとめてありますので、お時間があれば参考にしてください。
測定することの重要性と限界
ポイントは以下の通りです。
実感として音の変化は関知できそうな気はするが、現状の理論や測定によって確認できないものは基本的には以下のように取り扱うのがベターではないかと考えています。
特に、3番目の、曖昧さが残ることを根拠にして「改善」できるという商品を排除するというスタンスさえとっていれば、オカルトがはびこることはかなり防げると思います。
回答ありがとうございました。
過去ログも読ませていただきました。
>率直に申し上げて、何を測定したいのかがイマイチよく分かりません。
正直、私もよくわからないのです。
ただ、同一音源でSPからの音が変わるなら、アンプ出力段の波形そのものが変わっていないとおかしいわけで、測定項目がどうのこうのというより、波形を比較することはできないのかな?と考えたのです。素人の素朴な疑問とお受け取りください。
おっしゃるとおり、状態は時系列的に変化するので難しいのかもしれません。
将来、測定方法、機器が構築されるのを楽しみにしておきましょう。
>特に、3番目の、曖昧さが残ることを根拠にして「改善」できるという商品を排除するというスタンスさえとっていれば、オカルトがはびこることはかなり防げると思います。
そうですね。そのとおりだと思います。
お騒がせいたしました。引き続き、ブログを楽しく読ませていただきます。
いつも興味深く拝見しています。
私も最近、LANケーブルと音の関係について興味を持っています。
加えてHUBの問題も同様です。
ベルデンのLANケーブルは購入しやすい値段だったので使用してみました。
(良いか悪いかは別として)音は変化するように思います。
なぜなのか私も理由はよくわかりませんが、CAT6ケーブルを使用した場合、ファイルコピーなどのデータ転送速度は向上し、体感上もわかります。
このような性質が音に変化をもたらすのでしょうか?
引き続き、レポート期待しています。
この問題に対するキーワードは「cable induced jitter(ケーブルによって誘引されるジッター、その他「line induced jitter」、「interface induced jitter」なども同様)」ということになろうかと思います。これらの用語は英文で検索すればいくつもヒットしますが、残念ながらこの問題をオーティオ分野で日本語で解説したページはあまり見当たりません。
Cable induced jitter については、Digital Audio: The Possible and Impossible で、デジタルケーブルで音が変わる理由について、専門家が詳しく説明しています。そのポイントは、「But no cable can reproduce the perfect square wave with pulses going from zero to their final value in zero time.(しかし、0ポイントから所定の値までの遷移時間が0であるようなパルスを持つ、完璧な矩形波を再現できるケーブルは存在しない)」という部分です。
LANケーブルの中を0と1が流れているなどと思い込んでいるとしたら論外ですが(笑)、どんなケーブルであろうとも、流れているのはアナログ電流(信号)でしかありえません。デジタルの場合は、そのアナログ信号(擬似矩形波)で0と1を表しているだけです。電流(電圧)の変化を受信側が認識してしきい値によって0と1を判別するわけですが、その0と1の反転タイミングは伝送波が矩形波から大きく崩れるほど、大きく前後にずれます。これがジッターですが、時間的に連続した音楽データを再現するデジタルオーディオでは、これが最終的に音の違いとなって表れます。
実際に2本のケーブルのジッターパターンの実測値の違いをグラフ化したものが、「Figure 5 - Pattern-dependent jitter induced by cable losses in common analog audio cable(図5 - アナログオーディオケーブルで一般的に見られるケーブル損失に起因するパターン依存ジッター)」です。ここでは、データストリームにおいて0と1が判別される瞬間であるしきい値をクロス(「zero crossing」)するタイミングが、ケーブルを変えただけで変化していることが明確に示されています。
ケーブルに電気信号を通せば、物理的に不可避な問題として、そのケーブルの物理的特性に応じて信号は確実に劣化(変調)します。ケーブルが異なればその当然物理的特性も異なりますから、それが「変調の度合いの違い=ジッター特性の違い」となります。さらにいえば、同じケーブルであっても、その曲げ方を変えるだけで物理的特性が変化します。実際に音に違いとして聴き取れるかどうかを別にすれば、そんなことであっても、理論的には音が変わる要因となり得ます。
実際に音が変わるプロセスについては、「振動が時間軸を揺らす?」を読むとイメージし易いかもしれません。ここではケーブルの振動を取り上げていますが、原理は同じことです。
この問題は、ジッターの種類ということでは伝送ジッターということになりますが、より大きくはデータ依存ジッター(data dependent jitter)の一種と考えられます。ジッターの問題はデジタルオーティオ固有の問題ではなく、デジタル伝送全体に関わる大きな問題です。「デジタルだからデータは変わらない」などと簡単に言いますが、高速デジタル伝送では、データ依存ジッターにより、音が変わる程度の問題ではなく伝送そのものが不可能となるため、さまざまな対策が取られているのが現実です。
いずれにしても、デジタルオーディオを理解するには、ジッターをきちんと理解することが不可欠です。何を変えても音が変わってしまうというのは、何を変えてもジッター特性が変わってしまうからで、実際に音の違いとして聴き取れるかどうかは別にして、オカルトでも何でもありません。ジッターというのは、DA変換時のサンプリングジッターだけでなく、入口から出口まであらゆる場所であらゆる要因で発生します。そしてその根本には、完全な矩形波が物理的に実現不可能であるという事情があります。
LANケーブルについては、経験上5メートル程度の長さで使うのが最も音質が良いようです。伝送ジッターを考えるなら、本来ケーブルは1センチでも短くすべきですが、USBなどと違って長距離伝送を前提としているLAN伝送に限っては、数メートル程度のケーブル長の違いはほとんど問題とならないようです。
一方、ノイズの問題を考えると、パルストランスを介するLAN伝送であっても高周波ノイズはトランスをすり抜けてしまいます。しかし、ノイズは距離の二乗に反比例して減衰するため、長距離を伝わらない高周波ノイズであれば、5メートル程度の距離があれば完全に減衰するため、最も良い結果が得られるようです。
上の「振動が時間軸を揺らす?」で、意図した正しいページが表示されません。左側ペインの「ケーブルのヘソと音質/理論編・振動が時間軸を揺らす?」をくりっくしてください。
興味深い内容拝見させていただきました。
従来からオーディオ見ている方は、ハードウェアのことばかりに
目が行きがちですがデジタルの場合ソフト的な信号処理のことも
考える必要があると思います。
データ転送時にエラーがある場合(エラーがない完全な信号転送は
考えないのがデジタルデータを扱う基本だと思っています。
データ転送時にノイズが載ってもエラーにならない、システムが暴走
しないことが重要)欠落したデータをどう埋める(補間)のかが影響すると
思います。つまり良いケーブルだとデータの欠落が起き難いと考えられ
ますが如何でしょうか?
私もそれ程詳しくないのでデジタルオーディオの信号エラー
などで検索されたら良いと思います。
unichanさん、
LANの場合、家庭内で使用するような距離やノイズ環境ではパケット損失はまず起こらないようです。コマンドプロンプトからpingを打ち込んでみればわかりますが、損失0となるはずです。
ただ、ソフトウェア処理によるジッターの違い(音質の変化)には大きなものがあるようです。
ソフトウェア処理による低ジッター化では、Bughead が現在最先端を行っているように思います。メインメモリでのOS領域と音楽データ領域の分離、2レジスタ2回メモリ書き込みなど、独自の手法で高音質化を実現しています。頻繁に更新されるのですが、昨年は更新するたびに、ソフトウェアの処理が変わるだけで、いかに音質が変化するかを理屈抜きで体感させられました。
PC構成の考え方にも参考になるところが多々あります。i5相当のCPUをお持ちであれば、一度試してみる価値はあると思います。
初めて投稿させていただきます、JKと申します。
毎度、Yungさんの実験や皆さんの投稿に大いに勉強させていただいておりまして、感謝申し上げます。
さて、理論派・碩学のninoさんがBugheadのことに触れておられ、思わずキーボードを叩きました。
巷の評判を小耳に挟み、ver.4.xxから使用を再開してみたのですが、以前のものとは別物、驚くべき高音質のプレーヤーに生まれ変わっております。
私は、音楽鑑賞としてはクラシックオンリーですので、以前のもの(確かver.2.xx)は、何がしかの鮮度感は有りましたが、さほどの驚き・好印象は得られませんでした。
しかし現行のもの(今、ver.4.70です)は、一聴してその素晴らしさに惹きつけられるほどの躍進を遂げています。プレーヤー・ソフトの違いでこれほどの差が出るとは本当に驚きです。
電気音痴の私にはその高音質の理由を分析することはとても出来ませんが、素人なりに、内部に組み込まれているソフト(仕組み)のRewrite Dataなるものが大いに力を発揮しているのではないかと思っています。このソフト(Rewrite Data)は、当然映像関係でも奏功するはずで、PC絡みでヴィジュアルを楽しまれておられる方も、使ってみる価値は大いにあろうかと思います。
このソフトをお一人で開発・進化させていらっしゃる横田さんには、心から敬意を表したいと思います。
最後に、ご参考までに私の再生環境は、i5-3.4GHz CPUに16Gメモリー、Win7-UltimateのBTO-PCからUSBでDDCへ、I2SでAIT-LABOのDACにつなぎ、チェロのアンプ、ATCのSPというものです。
こんにちは
記事に内容に興味を持ったので、投稿させていただきます。
先に断っておきますが私は基本的に音質にこだわりがない人種です。
失礼かとは思いましたが、たまたま拝見したこちらの2015年4月11日の”LANケーブルの音質に与える影響を与えるか”の記事に非常に興味を持ちました。
しかし、検証方法に疑問があります。
なぜプレイヤーとスピーカーをLANでつなげて音質の比較をしているのかということです。
ケーブルによる違いを知りたいのであればプレイヤーとレコーダーを比較対象のLANケーブルで接続して録音し、ケーブルをはずしてからレコーダで再生して比較するべきだと思います。
理由はいくつかあります。
(1)まず、通信エラーについて問題となるのは前提として間違っていると思います。専用ケーブルもそうでないケーブルもデータの帯域に対して十分な帯域幅を持っていることは比較するための最低条件として必要です。”LANケーブルによる違いはあるか”という議題なのでなくてもいいのですが、『データ帯域が十分でないケーブルを使うとデータの欠落や誤りがあるから音がかわるよ』と他人に説明してもそりゃそうだろと言われるだけです。
(2)次に記事の中ではケーブル自体がアンテナとなってノイズを呼び込む可能性などを述べられています。
しかし、それはLANケーブルとは無関係な問題です。
なぜなら、LANケーブルとは別にプレイヤーとスピーカを銅線で結んだり、電源の配置を変えたりすることで、機器間のノイズの伝搬で音が変わるという話であり、LANケーブルだけの問題ではありません。また、ケーブルを変えなければ絶対に対策できないというわけでもありません。
(3)またデジタルで伝送しているといってもケーブルの中は結局アナログ信号じゃないかというのはLANケーブルの問題として取り上げるのは微妙ではないかと思います。
たしかに、ケーブル長が変わったりケーブルそのものが変わることでアイの開口率は変わりジッタが増大するのは事実です。受信側はLANケーブルで送られてくるデータからクロックを復元しデータの取得を行いますので、データ通信に影響は与えます。
しかし、それが音に影響するかといえばそこに疑問があります。データは一度バッファリングされてから音として再生されるわけですが、音の再生にLANで伝送してきたクロックを用いるとは考えにくいです。なぜならそもそもLANを通信する上で許容されるジッタがわりと大きいからです。なんせLANは音を伝送するための規格ではなく、データの送受信するための規格です。よって通信ができればいい程度の性能しかありません。
また、LANケーブルで伝送されるノイズが内部のクロックにも影響する可能性については(2)で述べたとおりです。
本件から外れるのですが、プレイヤーで再生したい音をスピーカーで完全に再現するには機器間でクロックが完全同期している必要があります。一応NTPとかIEEE1588とか同期するための規格はありますが、どちらにしてもそれはプレイヤーとスピーカー本体の問題です。尚、アイの開口率が下がってジッタが増大する場合は広域成分が減り、低域成分が増大します。その点はjimjim様の検証結果に符合するということは申し添えておきます。
長々となりましたが以上のように今回の検証方法はLANケーブル以外の外因としてノイズや本体の性能に影響を受けます。
よってプレイヤーとスピーカーをつなぐのではなく、デジタルデータのままデータを保存できるレコーダを接続してレコーダから再生することで検証したほうがよいかと思います。
この方法であれば専用ケーブルもそうでないケーブルも同様にレコーダの影響を受けます(レコーダ-スピーカ間でノイズや同期の問題について同じように影響を受けます)。
ここまでしても変わりがあるのであればやはりLANケーブルによる影響はあるのかもしれません。
最後にLANのクロックによる同期を行う機械があって専用設計までしていた場合、ハブをかましちゃいけないと思います。ハブはそんな設計されていないからです。一方でジッタの影響で低音域が変わっているのであれば、スピーカーの近くで一度ハブやリピータをかましてみてはいかがでしょう。クロックの性能としては下がりますがクロックの広域成分を改善することができるはずです。
はじめまして。
Cat7ケーブルをご利用とのことですが、Cat7ケーブルはSTP(シールデッドツイストペア)なので、ケーブルのシールドをシャーシアースに落とすような作りをしているようなCat7対応機器でないとかえってLANケーブルのシールドがアンテナになっているようなこともあり得ます。
UTP(アンシールデッドツイストペア)のLANケーブルから選ぶとすると、インピーダンス特性的な意味でCat5EよりCat6ケーブルを選んでおけば良いと思います。ただ、ケーブル内でツイストペアを保持するセパレーターが入っているので終端はしづらいです。
また、自作で成端するときは、ツイストペアをほぐしてもよい長さというのが仕様で決まっているので(これもインピーダンス特性的な意味で)注意が必要です。
ケーブル由来のジッター等々ですが、LANケーブルの仕様で定義されている範囲内であればLANカードの物理層が吸収して上位レイヤ(MAC層)に伝送するはずで、
ケーブルが変わってデータそのものがロストしなくなった、というよりはケーブルが変わってインピーダンス特性が変わるとLANカードの物理層が電源にノイズ乗せてバス経由でDACに影響する、かも、というのはあり得るのかもしれません。
Ethernetの100Base-TXや1000Base-Tのクロック同期(便宜上)について、規格としては上位のMAC層にデータを無事に引き渡せるよう物理層が勝手に頑張っているはずで、これもあり得るとすればやはり電源由来のアナログ的な影響のが大きいと思います。
デジタルデータのジッター補償という意味では、NASのLAN送信バッファ、(MAC層から物理層へ引き渡し)、LAN伝送上のクロック同期、(物理層からMAC層へ引き渡し)、PCのLAN受信バッファ、音楽再生アプリの再生バッファ、カーネルミキサなりWASAPIなり、とある中で、
最終的に影響するのは音楽再生アプリからスピーカーまでのどこかのはずで、そこから向こうのジッターが変わったところでデジタル由来で音が変化するというとはあり得ないことと思います。
ケーブル長については、本職のLAN工事屋さんから、LANケーブルっちゅうのは長すぎても短すぎてもいけない、というように聞いたことがあるので、パケロス等に影響はなくてもインピーダンスや輻射の影響などはあるのかもしれませんね。